act.1

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やがて、 「……いいだろう」 そう呟きながら胴元が右腕をあげれば、会場中に甲高いゴングの音が鳴り響く。 「fight!」 マイクを持った実況が声をあげる。 同時に金網の中の男たちがぐるぐると、四角いリングを回りながら動き始めた。 ここは、肉体ひとつで大金を生み出せる場所。 金網デスマッチ。 出場者に賭ける方も真剣だが、戦う方も真剣。 今夜の勝敗は『dead or alive』。 生死を問わない、生き残り勝負なのだ。 金網の中の5人の男たちは、すばやく自分の対戦者となる顔を見回した。 そのうち4人は、互いに見知っている、このリングのレスラーだ。 どれも常勝を誇っている強者たち。 その中にひとり、今夜は毛色の違うのが混ざっている。 ひょろりと背の高い東洋人。 シャツとジーンズという格好もいかにも場違いで、何故この場に放り込まれたのか、本人もわかっていない風にきょろきょろと落ち着きがない。 それは猛獣の檻に閉じ込められた、まさに哀れなイケニエの風情で……。 客は常に流血を求めている。 誰にでもわかりやすい、血の犠牲者だ。
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