act.1

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東洋人は身軽にひょいひょいと男たちの攻撃をかわす。 太い腕をくぐりぬけ、パンチをかわし、ブルトーザーのように突進してくる男を、サラリと闘牛士のように受け流す。 それは見事な身のこなしだが、 「ドッグファイトじゃねーぞ、こらぁ!」 「戦いやがれ、このチキン野郎」 会場からはヤジが飛んだ。 客たちはデスマッチを見に来たのだ。 殴り合いの血が飛び散る、殺し合いを望んでいる。 誰もテクニックなど求めていない。 東洋人が高広の方を仰ぎ見れば、高広はいまだ眠そうな目つきのままテーブルに足を乗せ、顔をあげようともしない。 靴の下になった10万$の束が、泥で汚れている。 このまま続行のしるし……。 「鬼畜だねぇ」 愚痴りながら、足払いを飛んでかわした。 続けてくる拳は、空中ではかわしきれない。 胸の前で腕を十字にして受け止める。 丸太のような腕の一撃は、東洋人の体を金網まで吹っ飛ばした。
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