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東洋人は身軽にひょいひょいと男たちの攻撃をかわす。
太い腕をくぐりぬけ、パンチをかわし、ブルトーザーのように突進してくる男を、サラリと闘牛士のように受け流す。
それは見事な身のこなしだが、
「ドッグファイトじゃねーぞ、こらぁ!」
「戦いやがれ、このチキン野郎」
会場からはヤジが飛んだ。
客たちはデスマッチを見に来たのだ。
殴り合いの血が飛び散る、殺し合いを望んでいる。
誰もテクニックなど求めていない。
東洋人が高広の方を仰ぎ見れば、高広はいまだ眠そうな目つきのままテーブルに足を乗せ、顔をあげようともしない。
靴の下になった10万$の束が、泥で汚れている。
このまま続行のしるし……。
「鬼畜だねぇ」
愚痴りながら、足払いを飛んでかわした。
続けてくる拳は、空中ではかわしきれない。
胸の前で腕を十字にして受け止める。
丸太のような腕の一撃は、東洋人の体を金網まで吹っ飛ばした。
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