ACT 1.究極のドリフト

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 一台の車が100Kmを超えるスピードで冬名峠のダウンヒルを走行していた。車種は白黒のAE86トレノ。  そのトレノがコーナー直前で減速し、ドリフトを決める。  フロント部分をガードレールギリギリまで寄せ付けて鮮やかにコーナーを抜けていく。  いくつかコーナーを抜けると、一台の車が見えてきた。  同じように下りを攻めているその車、黒のRX-7 FD3Sの後ろにトレノが張り付く。  FDのドライバーはバックミラー越しに車の存在を確認する。 (一台来やがった)  FDの速度を上げるドライバー。 (車種は何だ?)  緩い右コーナー直前でトレノがFDの横につける。 (ハ……ハチロクだと!? ふざけんな!)  FDが減速を始める。トレノはそのまま緩い右コーナーへ突っ込んでいく。その出口の先にはきつい左コーナーが待っている。 (きついコーナーなのに減速しねえ!? 何考えてんだ! やつは先を知らないのか!?)  トレノは右コーナーをクリアするが──。 (ほら見ろ。立て直して減速するスペースはねえ!)  だが次の左コーナーを減速もせずドリフトで抜けていく。 (慣性ドリフト!?)  FDはコーナーを抜けた先で止まり、ドライバーが降りてきた。 「俺は冬名で死んだ走り屋の幽霊でも見たのか……?」  一方のトレノは麓まで下り、そのまま帰路に就く。
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