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「なっ?!御陵ッ貴様――」
生徒会専用寮の入り口で鉢合わせしたのはお堅い“風紀委員長”サマ。外出していたのだろう、黒のスーツ姿だった。
「その人は、誰だ」
横抱きにした夏樹を目にして真っ赤になる法の番人。ストイックに固めた髪を掻き毟ろうと伸ばした腕が行き場を失う。
(真面目だねぇホント)
「藍沢ぁ~お疲れさま」
労いの言葉をひとことだけかけて「面倒はごめんだよ」そう呟く。この場をやり過ごそうと自動ドアを潜りエントランスに一歩、足を踏み入れた。
「たけるの彼氏でーす」
「なんだとっ!?」
「藍沢違うから。なつきは黙って」
「じゃあ、カノジョ?」
アルコールで潤む瞳に見上げられながら。
「たける?」
首をかしげる夏樹に苦笑いして溜め息を吐いた。
(あーあ。めんどくせぇガキ)
「そう、俺の彼女~」
「カノジョだよーオレ」
「なっ!?待たんか――」
(明日は『風紀』呼び出し確定かぁ……サボり決定だねぇ)
堅物に向かって無邪気に手を振る夏樹を見下ろした。
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