運命の再開だといいのに

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 そんな気分が落ち込み気味だった日々に限り、レストランアポロでは宴会の予約のお客様が入った。  11月初旬で、時期的に忘年会には早く、また忘年会にしては豪勢だと思った。 「その方々、何でウチに?」  私はオーナーに訊いた。隣では友部さんがグラスを選んで磨いている。 「忘年会兼、送別会だと」 「うちで? 居酒屋じゃないんだ」  友部さんが苛立ちながら言う。  分からないわけではない。  送別会だの忘年会だのとなれば、騒がしくなるのは目に見えている。  その横で静かにディナーを楽しむお客様がいることなどお構いなしだろう。  なぜオーナーが予約OKにしたのかと、私もちらりと上目で見てしまう。 「金あるんだろお。俺はオーナーとして嬉しいよ。予算もばっちり頂いてるし。でもまあ、電話越しの奴は嫌な感じだったな」 「え?」  私が分からなくて友部さんを見ると、グラスを真剣に磨きながらもククククと笑っていた。何がおかしいのかと見ても、友部さんはきゅきゅっとグラスを磨くだけで、私の方は見なかった。 (教えてくれてもいいのに、ケチ)  不貞腐れながら、視線を落とす。  このところ、どうもうまく歯車が回っていない気がする。 
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