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美香にしても英語の教科書と首っ引きの、それほど目立たない印象の薄い女子学生だったはずだ。それが、今風の女優髪ですごく綺麗になっていた。
こちらに好感を持っていたはず(?)のハゲの安西まで刈り取られてしまったとなると、いったい独身の男達は残っているものだろうか。
会場をほぼ横切ったあたりで、さくらはやっと竹内の姿を見つけた。
年配の男性と話しているらしい彼にどう近づこうか思案していると、白いスーツを着た清楚な感じの女性がどこからか現われて親しそうに竹内の隣に並び立ち、共に初老の男性に会釈しているではないか。
どうやら教授らしきその人物が立ち去ったので、さくらは意を決して竹内と、もしかしたらそのクラスメートらしき女性に近寄る。
尻尾を巻いて退散してしまえば、安西と美香のように会で出逢った同窓の二人が意気投合して即刻婚約してしまう怖れさえあるのだから、ここで勇気を出さなくては。
さくらが近づくと、竹内はあの魅惑的な笑みを浮かべた。
「そうだ、紹介しておきます。家内です」
(第3章に続く)
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