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高層ビルの窓の外には美しい東京の夜景が煌めいている。
場所は今夜の集まりの幹事を務めた里子のオフィスがある汐溜。七月ともなるとレストランの予約も空いているとのことで高層階に入っている評判の和食店で集合することになった。
「わー、美味しそう。これって芸術的ね」
美しいガラス器に氷とともに盛られたお造りを見て紀香が手を叩いて喜び、店と料理を選んだ里子が満足そうに微笑した。
「やっぱりこのコースにして正解だったわね。独身者で集まる晩にはこれからは少し豪華版でリッチに行こう。私達が所帯持ちみたいなケチなことを言っていたんじゃ、日本経済の復興はままならないわ」
今宵の女子会のメンツは独身組、いわば女子会仲間のサブグループともいえ、時おりこうして独身者だけで集まる。
さくらを含め三人は高校時代のクラスの仲間で、皆親元に住んでいる。「パラサイトシングル」と一時ネーミングされたように、食事・洗濯・掃除付きの快適な実家住まいなので家賃や食費の心配をする必要がなく、お給料のほぼ全額を自分の消費に回すことができる「独身貴族」だ。
いつもの飲み会では仕事の愚痴を語り合ったりしてストレスを発散するわけだが、独身仲間だけで寄り合うとおのずと男の話題が出る。
「で、婚活がどうしたって?」
里子に促されてさくらは話を続けた。
「それがね、先ずは職場や同窓会で、なんてよく書いてあるじゃない。それでちょっと物色したの。そうしたら、なんと素敵な人はもうみんな刈り取られているんだ」
冷たい白ワインを飲みながら、さくらはここ数週間の成果、いや、失敗を公表して女友達の裁定を仰いだ。
「みんな、って大袈裟じゃない。同僚の草食系男を同僚の肉食系女子に取られた。同窓のハゲ男が同窓のレーザー女子と婚約した。それだけで天変地異が起きたみたいに慌てる必要って全然ないと思うよ」
里子はさくらと同じく受験勉強をして共学の大学に進んだ友人で、昔から理路整然、姉御肌なところがある。
紀香が刺身を掴んでいた箸を止めてさくらの助太刀に廻った。
「私はさくらの気持ち、よくわかるな。春子の結婚式に出て、思わず涙ぐんじゃったもの。やっぱり結婚っていいな、羨ましいな、って。いつか誰かにプロポーズされたい、って思うわ。
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