第3章  ひたすら女磨き!

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流行りか何か知らないけれど、よく電車に下着みたいな恰好やすげえ短いパンツで太股出して乗っている女の子がいるけどさあ、仮にそういうのが眼の保養になるとしても、男としては自分の彼女には人前で絶対ああいう恰好はされたくないぜ」  ジョーでさえひょっとして部屋に女性の水着姿の写真を貼ってでもいるのかと思うと不快だったが、彼の洞察には一理あるような気もする。  しかし、ここで素直に納得したのでは姉貴分としての沽券にかかわるので、さくらは小鼻をツンと上に向けた。 「だから、結婚できる服、なわけ。単なる遊び相手ではなく、奥さんにしたいようなイメージ作りが大切なの。そういうビジュアルと第一印象こそがプロポーズに繋がるわけ」 「だったら何もしなくて普通がいいんじゃない? 今日はキメて来ました、みたいな恰好されたら、怖ろしくなって男は逃げるよ」 「どういうこと?」 「だってそうだろう。やっぱ男は、自由を謳歌していたい、みたいなところがあるからさ、この子と付き合ったあかつきには求婚しなきゃいけないだろうな、みたいなタイプって、ちょっと引くよね」  さくらはビールを飲みながらジョーの言葉を反芻する。  要は、結婚相手を探している男には「結婚できる服」がアピールするとして、残っている独身男の中には結婚を逃げ廻っているようなタイプも多いに相違なく(だから残っているわけだ)、そういう輩には「彼氏ができる服」で自然にアプローチ、という方が賢いのかもしれない。 「難しい問題だわ」  さくらは再びビールのグラスに唇を付ける。 「お前が故意に問題を難しくしているだけだよ。要は、好きになった子がどういう恰好していようと、よほど奇抜な恰好でなきゃ気にならないものさ。 女の子を見かけても、男ってのは、ピンク色を着た子、とか、胸が大きい子、とか、その程度の印象しかないわけ」  ジョーの言葉にさくらは愕然とする。ということは、男をなびかせるべく一万円以上投資した髪型は無駄だったということだろうか。 「さあ、新しい髪型に新しいワードローブを揃えて勇んで男狩り(失礼!)に行こう」と逸っていた気分が、風船にピンを刺されたかのごとく凋んでいく。  グラスにビールを継ぎ足して、さくらはジョーに絡んだ。  
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