第3章  ひたすら女磨き!

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「ということは何をしても無駄、っていうわけ? せっかく女磨きをしようと張り切っている私の努力と戦意に水を差すわけね」  さくらのキツイ声音に気づいて、ジョーは当惑した顔で振り向いた。 「別に磨かなくてもいいじゃないか。ありのままのさくらが好きだ、って男を見つければいいだけだろう?」 「そんな男がいたら、とっくの昔に結婚しているわよ。もういいわよ。そういう冷たいことを言うなら、相談してあげないわ」  さくらはグラスのビールを一気に飲み干すと、呆気に取られた顔をしているジョーに黙って勘定を支払い、怒って店を出た。  この際ジョーが愕くような美人になってみせる、とさくらは固く胸の内で誓う。  紀香と一緒にさくらが通うことにしたのは新宿駅西口近くにあるアスレチック・クラブだ。ロケーションが大事なの、と色々調べて来た紀香は言う。  若くて有望な男性社員が多く勤めていそうな企業が集積しており、且つオフィスか自宅に近くて三日坊主にならないですむ場所、というのが理想らしい。  里子が勤める汐溜界隈も候補に挙がったが、遠回りになるロケーションでは長続きしそうもないということで却下された。  商業ビルの二階に入居しているクラブは受付がホテルのような落ち着いた雰囲気だが、入会金が高いわけではない。  お嬢様な紀香は自宅近くの高級アスレチック・クラブに家族と入会しているのだが、そういう超プレミアム路線のクラブに通ってくるのは有閑マダムや金持ちの老人やヤクザ風の男、そしてその愛人らしき若い女達、というところらしい。 「普通、がいいのよ」と、何だか紀香までジョーのような口をきく。  このクラブは女性ロッカールームがそれほど大きくないところもポイントが高いそうだ。なぜならそれは男性会員が多いという証左だからとのこと。 「ゴルフ場と同じ。男性プレーヤーが多いから男性用ロッカールームは(見たことがないけれど)大きくて、女性用ロッカールームはとって付けたみたいに小さいわけ」  紀香の解説にさくらは、なるほど、とうなずいた。  ロッカールームで買って来たばかりのアスレチックウェア、すなわちテロテロのTシャツ風トップとランニングショーツに着替えながら、いざ出陣、とさくらは胸の内でカツを入れた。  
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