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悪友うち揃っての伊香保詣では湯女観音菩薩を拝む魂胆だった。練三郎の口癖だが、(何事も溜めすぎは体に悪い、ほどほどのところで放熱しないと、弓の弦だって折れる)なのだ。
「それではじゃじゃ馬どのを今日は軽く揉んで差し上げようか」
「軽く揉んで差し上げるなんて、好太郎さんなんて嫌い!」
珠美が真っ赤な顔になって奥へ消えた。
治療室を覗くと練三郎と目が合った。
「あとで話しがある」
といい、珠美の後を追って客間へ行った。将棋の腕は珠美がはるかに上だった。好太郎が初めて駒を握ったのも、珠美に無理矢理せがまれたからだった。将棋が嫌いという訳ではないが性に合わない。
「もう、好太郎さんの駒、並べてあります」
手回しの良いことだ。珠美は先程のことは忘れたのか、嬉々として打ち込んでくる。気合いの入った駒音に、対局を待ちかねていた気の昂まりが伝わってくる。留守中の相手を探してやらねば……。そんなことを胸の中で呟いていた。
半刻で三局指した。そんなところへ練三郎が入って来た。
「珠美、夕餉の支度ができたら知らせてくれ」
珠美が渋々客間を出た。
「話しって何だ?」
「伊香保、行けなくなった」
「どうしてだ」
「伯父上の心配性がまた始まった」
「どういうことだ」
「国表に行くことになった」
「急な話だな」
「ああ、大伯父からも頼まれた。断るわけにはゆかなかった」
「面倒なことか」
「それがどうも良く分からぬ。伯父も殿も藩の存亡に関わることだという。それが何故、男オンナと関わっているのか、もうひとつはっきりしない」
「男オンナとはどういう事だ」
「伯父の申すには、国表で半陰陽つまりふたなりが、異常発生しているとのことだ。瓜や茄子じゃあるまいしといったのだが、真面目な顔で半陰陽だといった。そんなものが異常に現れるものなのか」
「藩屋敷でもその話しは聞いた。まあ、ふたなりが生まれるとすれば、何万人にひとりくらいの確率だな。おそらくふたなりではないな。何故なら人為的としか考えられないからだ。考えられるのは男の陰嚢、つまりふぐりを切除し、睾丸を取り捨てる。この玉が二つないと陰茎に力が漲らない。そうなると挿入すらできなくなる。日が経つほどに男性機能が低下し、体は女性化する。多分、虚勢手術が組織的に行われているのかも?」
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