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──人が、倒れていた。
詳しく言うと、その“人”はうつ伏せで倒れていた。
暗い夜道に徐々に馴れつつある目で判断すると、その人の体型や髪型は女性的なそれである事が分かった。
他には、彼女の髪の色が黒ではなく金色である事、無地の白いシャツにジーンズだけという簡素な服装をしている事も分かった。
とはいえ、分かったのはあくまでそれらの視覚的な情報だけだ。
『夜道で女性が倒れている』などという状況の方は理解できるはずもなく、結局のところ誠都はただただ立ち止まって呆然とすることしかできなかった。
パニックに陥りそうになりながらもどうにか頭脳を振り絞り、「救急車を呼ぶ」という選択肢にたどり着いた誠都。
と、その刹那、
「……誰、か、居るん……ですか……?」
誠都の近くから今にも消え入りそうな声が聞こえた。
思わず辺りを見回す誠都。
しかし、今の時間帯に加えてここは人通りが少ない道なので、周りには当然誰も居ない。
もしや、と思い至り、誠都は倒れている女性の方を見た。
果たして誠都の予想通り、女性は顔を少しだけ上げて、立ち止まる誠都を見上げていた。幸いと言うべきか、どうやら意識はあるようだった。
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