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結局、誠都が倒れた女性のもとに再びたどり着いたのは、先刻の会話から5分もしないうちのことだった。
とにかく食べられるものを、と入口から最も近い商品陳列棚の食品──そこはパンばかりだったが、この際食品なら何でもよかった──を手当たり次第に買い物カゴに入れ、迅速にレジへと向かったのである。
──会計に時間を取られたような感じはするが、それでも大丈夫、まだ間に合うハズ。
真都はそう考えつつ、急いで移動したせいで乱れた呼吸を、肩で大きく数回整えると。
数にして十数個ほどの戦利品の入ったコンビニ袋から、そのうちの一つ──メロンパンを取り出して、地に伏す女性に手渡した。
「……すいません、開けてもらえますか……?」
「……まあ、かまわないですけど」
女性は弱々しく真都にお願いした。商品の包装を開ける体力および気力もないらしい。
真都は女性のその衰弱具合を悟り、包装の開封を承諾し、開封されたメロンパンを女性に差し出した。
すると。
「ふっかあぁぁぁぁぁっつ!!」
一瞬でメロンパンが女性の口の中に消えたかと思うと、次の瞬間にはもうあの衰弱した姿はなく、立ち上がり元気いっぱいに雄叫びをあげる彼女の姿があった。
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