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「え? え?」
あまりに一瞬の出来事に、誠都が呆気にとられていると。
「その袋のやつ全部下さい」
彼女は、そんな図々しい事を言って誠都からコンビニ袋をひったくった。
そして。
びりびり、むっしゃむっしゃ、もぐもぐ、ごっくん。
そんな音をたてて、開けては食べ、開けては食べ。およそ女性とは思えないような食べ方で、誠都が持つ袋の中の食品を全て食らい尽くしたのだった。
「…………」
いや、別に、ほとんど彼女の為に買った物だからいいのだけど。誠都は、今日で女性への幻想がどこか崩壊したのを感じた。
というか結局、自分は何の為にコンビニへ来たのだろうか。そう思わずにはいられなかった。
「……ふー、ごちそうさまでした。助かりました」
誠都の謎の心労をよそに、お腹をさすり、満腹であるジェスチャーをとる女性。
「……そりゃよかったです」
実は少々無理をしたため財布の中身はよくないことになってしまったが、まあそれで彼女が一命を取り留めたのだから安いものだ。
「お礼と言っては何ですが…………さぁ願いを言いなさい。どんな願いでもひとつだけ叶えてあげましょう……」
「神龍か」
と、思わず誠都は、彼女の言葉にそうツッコんでしまった。
しまった、と思った時にはもう遅い。
早い話、誠都はノリが良い人間だったのだが、会ったばかりの人間に対してのこのツッコミは、さすがに気分を悪くさせてしまっただろう。
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