30人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、そうだ! あなたの名前、教えて下さいよ」
と、女性は、ふと思い出したようにそう言った。
「名前……? 湯月誠都ですけど」
「ふむ、誠意の『誠』に都市の『都』で誠都さん、ですか。良い名前ですね~。ぐへへ」
「あれ? なんで僕の漢字知ってるんですか?」
気持ち悪い笑みを浮かべる彼女が、なぜ自分の名前の表記を知っているのだろうか。誠都は疑問を呈さずにはいられなかった。
「『なんで』と言われましても……小説なんだから当たり前でしょう」
「なんて身も蓋もないことを!」
それは、誰も触れてはいけない禁忌の事実である。
「あぁそういえば、あなただけに名乗ってもらうのも不公平ですね。私の名前は、エリーゼと言います。職業は女神です」
「へぇ、エリーゼって言うのか。職業は女神(笑)なんだ(失笑)」
「2回も笑いましたね!?」
「そりゃあ笑うしかないからな」
一体、どこの世界に自己紹介で女神などと宣う馬鹿がいるというのだろうか。
その考えから、エリーゼを「普通より頭が弱い人間(格下)」と認定した誠都は、彼女にはタメ口を用いて話すことにした。
ひどいし無礼な気がするが、これでより鋭いツッコミは可能になる。「だから何だ」と言われたらそれまでだが。
最初のコメントを投稿しよう!