黎樹の告白

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確かに、そこまでは容易にわかることだ。 「ま、それだけなら着任してから暴露してもよかったよね。 …僕は、父上の願いを叶えるために、計画の一端として言わなかったんだよ。」 賢王帝の願いとは…。 「…賢王の願いってのはなんだ?」 黎樹は口許を弓形にして笑う。 「…『我は毒を盛られた。もう、長くはない。おまえに全てを託そう。 願わくば、血を流さずして、あやつらに苦汁を飲ませてやらんことを。 そして、愛する国民全てを導き、歴代の王と国を栄えさせよ。』」 まるでそこに、賢王帝がいるかのような声音で、口調で黎樹が紡ぐ真実。 矢張、賢王帝は"殺された"。 その事実を知っているのは、黎樹ただ一人。 彼女の野望と希望が入り交じった政の真意がここで明かされたのだ。 「僕は皆を信じている。だから、お願いだ。 僕がいなくなっても、父上の意向を引き継いでほしい。」 …誰も見たことのない、大臣王らしい眼差しの黎樹がそこにいた。 「「……御意。」」 ここにいる全てが承認となった。 彼女を真の大臣王と認め、彼女が選んだ春蓮を支える決意の表れを示した。 「…だがよ?肝心の春蓮がいないぜ?」 「え?誰も探してないの?」
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