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「…い!おい!黎樹!そんなちんたら歩いてて良いのかよ?!」
掴まれているはずの賀竜が前を歩いていた。
「何を急ぐ必要がある?僕は無駄な体力は使わない主義でね。」
「てめぇは、いつもガキ共と全力で遊んでやがるだろ!」
「…ちっ。」
「おい!今舌打ちしたろ?!」
黎樹は下手な口笛を吹く。
「おまえは、馬鹿なのか天才なのか…。」
「両方に決まっているじゃないか♪」
どんなときも動揺など見せない黎樹。
変わらず、飄々とした態度を崩さない黎樹。
さっきの話を聞くまでは、怒鳴らずにいられなかった。
しかし、知ってしまった今は、"全て"に理由があると思わずにいられない。
では、まだ話していないこともあるはずだと。
だからと言って、聞いても話しはしないだろう。
彼女は、時を見計らう。待つしかないのだろう。
賀竜は待つのが苦手だが、黎樹には勝てない。
女だと知ったからではない。
きっと、初めて会った時から。
「で?どうするんだ?」
「ん?ここは、真正面からいくよ?」
そんなコントのような二人が、文官長の執務室前に差し掛かったとき、"声"が聞こえた。
『…あなたに黎樹を理解することは出来ない。』
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