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春蓮はベッドの脇に行き、布団から出ている黎樹の手を握りしめる。
…昨日触れた彼女の手は、こんなにも弱々しかっただろうか?
「…どうしたじゃねぇよ。なんでおまえ、そこにいるんだよ?」
ベッドまで来た賀竜は震える手を握りしめた。
「なんでって…。朝起きたら、起き上がれなくってさー。
…………最後に会えたのが、君たちで良かったよ。」
…二人は覚悟から目を背けていた。
昨日まで、いつもと変わらない黎樹を見て、きっとあれは彼女の冗談なんだと信じたかったから。
黎樹は傍にいる春蓮に手を伸ばす。
触れられるように、春蓮は顔を近づけた。
両頬を両手で優しく包み、ぐいっと引き寄せられた。
その瞬間、春蓮は黎樹に口づけされていた。
黎樹が手を離すと、春蓮はパッと離れ、口元を手で塞ぐ。
…涙が出た。悲しかったわけではない。
………嬉しかったから。
「おい!黎樹!春蓮に何した?!」
死角で見えていなかった賀竜が、春蓮が離れたと同時に、詰め寄った。
黎樹は近づいた賀竜の首に腕を絡め、引き寄せる。
「ちょっ!おまっ!」
そのまま、賀竜とも口づけた。
腕を緩めると、彼はしりもちをついた。
顔を真っ赤にしながら。
「…僕は誰よりも、春蓮を賀竜を信じているよ。
そして、誰よりも……君たちを愛している。」
友を見るような、最愛の人を見るような瞳で二人を見つめた。
「…向こうで待っているから。」
そう最後に言い残し、黎樹は息を引き取った。
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