信念は最後まで

4/4
前へ
/24ページ
次へ
春蓮は黎樹と同じ顔の黎娟を見つめ、頷いた。 同じ顔だけど、この人は黎樹じゃない。 黎樹を産んでくれた人。 「アイツは、お父上のために、自分のためにやったんですよ。 後悔はしていないはずです。 "俺たちはそれを知っています"。」 黎娟は、二人の真剣な顔を見て、顔を綻ばせる。 「…あなた方がいてくれてよかった。」 そして、彼女は……。 『母上。僕は、父上や母上を想う以上に、春蓮を賀竜を大切に想っているよ。 かけがえのない存在だから。』 黎樹の声音で、黎樹の口調で。 春蓮は涙が止めどなく流れた。 賀竜は歯を食い縛った。 矢張、黎樹はこの人の娘なのだと悟った。 「…そういうことなのでしょうね。 あの子は、女にも男にもなれず、しかし、女でも男でもあった…。 これからもあの子のこと、宜しくお願い致します。」 微笑みなから、彼女は立ち去った。 …食えない性格は、母親譲りと言うわけか。 ━その黎娟が息を引き取ったのは、それから一年経ってから。 黎樹は一言も、母親が死んでいるとは言わなかった。 最後のサプライズに二人は、涙ながらに苦笑した。 ━葬儀のすぐあと、春蓮は壇上に上がっていた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加