出逢い

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黎樹は春蓮に、楼(文官たちの集う、城みたいな職場)の書物庫を案内した。 「さぁ、好きなだけ読むといい。知識はいくらあってもいいからね。」 黎樹にはもう必要のない物ばかり。 しかし、彼女には必要な物だ。 黎樹の脳には、全ての書物の知識が備わっている。 そして、それ以上の知識も。 「…いつか、君のような人たちが好きに知識を得られる時代が来るといいよね。」 聞こえるか聞こえないかの小さな呟き。 きっと、着任してから初めて、本音を語ったかもしれない。 そんな黎樹を、春蓮は静かに、ただ静かに見つめていた。 「…ちょっと城下町に遊びに行ってくるから、読み倒しちゃっててね。」 春蓮を残し、黎樹はまた、城下町へと向かっていった。 ……静寂のみが、支配する。 彼女は一冊手に取ると、微かに微笑みながら捲り始める。 ……隅で読んでいると、話し声がした。 「…大臣王が、見ず知らずの娘を連れてきた?何とも傍迷惑な…。 まぁ、娘一人いたところで何も変わらんだろう。 所詮、女だしな。丸め込めばいい。 しかし、何故賢王は黎樹様を指名されたのか。 学院一の秀才であろうとも、出時が不明だと言うではないか。」 …春蓮は顔を上げて、声のする方をただひたすら見ていた。
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