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春蓮を置いて、城下町に来た黎樹。
子どもたちに誘われて、気ままに遊ぶ様は何とも、王らしくない。
子どもに負けずと劣らず、涼しい顔をしている。
そんな中でも、もう一人の観察対象者を見逃さない。
毎日違う、大きな荷物を運ぶ男。
頼まれれば、嫌な顔を一つしないで、率先して力仕事を受け持つ。
口は荒いが、好感が持てる青年だ。
表情がコロコロ変わるのを見ると、裏表などないのだろう。
専ら黎樹の悩みは、この男への口説き文句だ。
一筋縄では行かないだろう。
ただ来てほしいだけでは、来ない。
ここは矢張、直球勝負だろうか。
休憩だろうか。
低い石壁に寄りかかり、手拭いで汗をぬぐいながら煙草に火を着けている。
「やぁ、僕にも一本頂けるかな?」
彼は黎樹に目を丸くする。
「へ?あ?あんた、新大臣王の…。」
「うん、黎樹だよ♪」
「供も付けずに、一人で城下町視察かい?"黎樹様"。」
煙草をすぃっと一本出し、黎樹に向ける。
「ありがとー♪"まだ"、いないんだよねぇ。」
口に加えると、男の煙草の火口に顔を近づけた。
男も、つけやすいように顔を向ける。
「…"まだ"ってことは、"楼"以外から探すのか?」
「うん。あの場所では無理だよ。だから…。」
一息、煙を吐き出す。
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