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…黎樹の側に、賀竜の姿はない。
祝会の波に飲まれていて、離れていた。
黎樹は気にも止めず、先に帰宅して皆を出迎えようと邸宅にただ一人向かう。
………しかし、足を止めた。
「…五番地に何故、邸宅があるのかな?」
ふらふらと中に入る。
そこには………、酔い潰れた文官長が嫡子、《雲嵬(うんがい)》が大の字で寝ていた。
「本当に、コイツらは僕の邪魔をするのが好きだなぁ。
……時間が無いっていうのにさぁ。」
この件は、宴が終わってからでもどうとでもなるだろうと後にした。
向かう先は、十五番地にある邸宅。
この国で一番大きな、黎樹の邸宅だ。
……家族はおろか、使用人などはいない。
黎樹は皆のために、お茶を自ら容れ始めた。
━この五年、黎樹が成し遂げた偉業により、中立の立場の者や国民が、黎樹を支持し始めていた。
味方は多いに越したことはない。
最初は春蓮と賀竜の二人だけだったのだから、かなりの快挙と言えるだろう。
楼にいる文官たちと国民の落差を無くし、自由に学べる環境を造った。
無意味に高い税金を妥当値に引き下げた。
労働に見会わない低賃金や高賃金を一定化した。
文官長たちを一蹴し、有無を言わせない理由を叩きつけ、今に至る。
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