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「でもまぁ、それは縁がなかったってことだし、今度の人はいい人かもしれないじゃん?」
残した弁当を仕舞おうと箸をおくと、にゅっと手を伸ばした弥代に箸を奪われ、「残すなら俺にちょーだい!」と言われ、弁当を手渡すと弥代は子犬のように笑った。
「でも本当にいい人だったらどうしよう」
「えぇ!!むっちゃん付き合っちゃうの?!もう私のむっちゃんじゃなくなっちゃうの?!」
けまりが口の周りに菓子パンの砂糖をつけながら涙目で私にしがみついた。
「うーん、どうだろうねー、もしかしたらってこともあるしさ」
「どうだか」
弥代は私の残したお弁当を既に平らげ、満腹といった様子でお腹を撫でた。
「何よ」
「だって、自分で手紙も渡せないようなやつだぜ?ただのヘタレに決まってるって」
弥代はふんっと鼻を鳴らし、ウトウトしかけている暦に抱きついた。
「そのシキって人、私知ってるかも」
「えっ?!」
突然希子ちゃんが髪の毛を撫でながらそう言った。
「うん。バスケ部だったと思う。」
「バスケ部?!てか、弥代もバスケ部じゃん!!なのに知らないの?」
私が驚いてそう聞くと、弥代は「うーん」と首を捻った。
「……あぁー、よく考えてみたらいたかもー」
「えぇぇ…しっかりしてよぉ、弥代ぉ」
脱力して希子ちゃんに寄り掛かった私はふあぁとあくびをする暦を見た。
「…暦はどうせ、わけもわからない話に巻き込まれてよくわからないまま手紙を渡されたんでしょ。真相はそのシキ君に聞くべきよ」
「そっかぁ。暦もいろいろ大変だったのね」
暦はコクンと頷いて私に頭を差し出した。
「撫でて」という合図だ。
「よしよし」
「あー暦ずるいー。私も撫でてー!!」
けまりの頭をついでに撫でながら私は小さくため息をついた。
「もし断ったら私一人で帰るの寂しいから誰か一緒に帰ろうよ」
「パス。私今日用事あるから先に帰らなきゃ」
希子ちゃんは即答し眼鏡を直した。
「私も部活があるし、そのあとは後輩達とご飯行く予定があるから無理だぁ」
「そっかぁ。相変わらずけまりたち美術部仲間は仲がいいねぇ」
「暦は?」
「俺今日ばあちゃんの見舞い」
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