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「なるほど…。あ、えっと、俺は二年の志木 水樹(しき みずき)って言います。バスケ部です。」
「あ、二年生なんだ。後輩なんだね、見えなかったよー」
志木君は照れくさそうにはにかんで頭をかいた。
「ところで、要件は?」
「あ、そうでしたね。…えっと、単刀直入に言うと、好きなんです」
本当に単刀直入に言うものだから、身構えていたのに心臓が跳ねてしまった。
この雰囲気は私は苦手だ。
「だから付き合ってほしいんです」
「え、っと…」
まっすぐ見つめる瞳に逃れられずに返答に困っていると志木君は不安そうに首を傾げた。
「ダメ…ですか?」
まるで小動物のように目を潤ませ、長身のくせに可愛く見えてくる。
何だこれ…作戦か…?
「その、悪いんだけど、私、志木君のことよく知らないし…その…」
「そっか…。そうですよね。すいません、俺が一方的に好きになっちゃってたんです。いきなり言われても困りますよね、すいません…」
しゅんとしおれた志木君はこの世のものとは思えない可愛さをフル活用して私を見つめた。
「あ…う…そのっ、えっと…!!と、友達からじゃダメかな?!」
「えっ…本当ですか?!いいんですか?!」
なんで私が頼み込んでるような形になってるんだろうと心の中で自問しながら私は強く首を振った。
「うんうん!!大丈夫!!ほら、友達の握手しよ?!」
半ば強引に志木君の手を取ってブンブンと握手をした。
「あ、ありがとうございます…!」
志木君は満面の笑みを浮かべてとても嬉しそうにした。
「そ、そう…よかったよ」
私は苦笑いではぁと息をついた。
「じゃあ…これからも俺は好きでい続けていいんですか?」
「へぇッ?!」
また情けない声が出て、志木君はふっと笑った。
「俺は先輩と友達関係をこれから始めますけど、あくまでも俺に振り向くまでの期間です。だから、俺は何としてでも先輩を振り向かせます。…いいですよね?」
不敵な笑みを浮かべた志木君はもう小悪魔と言ったらいいのか、天使と言ったらいいのかわからなくなってきた。何故か跳ねてしまう心臓をなだめながら平静を装って答えた。
「うん、頑張って」
「はい」
クスリと笑った志木君を横目に私は落ち着くために深呼吸を静かに繰り返した。
「…あっ。そういえばバスケ部はミーティングって聞いたけど、志木君は行かなくてよかったの?」
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