2人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、別に大丈夫です。あれは先輩方だけのミーティングなので。…あと、俺のことは水樹って呼んでください。友達なので」
「ん?あ、うん、わかったよ」
「はい」
志木君…水樹君は私を目で促すと、私の歩幅に合わせて歩き始めた。
「ところで、なんでミーティングがあるって知ってたんですか?」
「あぁ、友達がバスケ部でさ。佐間犬って知らない?」
私がそう聞くと、水樹君驚いたように目を丸くした。
「知ってるも何も、あの手紙書いたのが佐間犬先輩ですよ!」
「え…?………ええ?!」
思わず声をあげてしまい、水樹君の顔を凝視した。
「それ、本当なの?!」
「え?あ、はい。本当ですよ。俺、ずっと好きな人がいるって話したら俺が手紙書いてやるーって言って、勝手に書いて、渡されたと思ったらあいつに渡しときゃなんとかなるって言われて、月島先輩のお友達に渡してもらうことになって…」
衝撃の事実に開いた口がふさがらず、私は茫然と立ち尽くしていた。
「じ、じゃあ、弥代は、水樹君が私のこと好きだって知ってたってこと…?」
「そう…ですね」
水樹君は不思議そうに私を見つめ、大丈夫ですか?と顔色を窺った。
「あ、うん!!大丈夫何でもないよ!!」
「そうですか…?ならいいんですけど…」
「うん。…あっ、私待ち合わせしてるから、これで帰るね…」
「あ、送ります」
「ううん、大丈夫、ありがとう」
私が優しく笑うと水樹君は頬を赤らめて、わかりましたと微笑んだ。
「あ、じゃあ、連絡先、教えてもらってもいいですか?」
「あ、いいよー。いつでも連絡して?」
「はい」
私は携帯を取り出し、水樹君の連絡先を登録する。
「…よし、じゃあ、また明日ね」
「はい、また」
私は水樹君に手を振って駆け足で図書室に向かっていった。
…どこかモヤモヤした気持ちが胸の中に繁殖していって、黒ずみを作っていく。
弥代は知っていたの…?それに、手紙を書いたのは弥代なのに、なんで何も言ってくれなかったんだろう。
嫌な気持ちを胸に押し込めながら私は図書室へと急いだ。
最初のコメントを投稿しよう!