出会い

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それが、福原凛太郎と私の出会いだった。 幼かった凛太郎は、むっちゃん、むっちゃんと私を慕い、いつもついて回った。 突然弟ができた私に、最初は驚いていた友達も徐々に凛太郎を受け入れてくれるようになった。 幼稚園の頃から一緒だった仲良し五人組の、高政 暦(たかまさ こよみ)と道野辺 希子(みちのべ きこ)、野薔薇 けまり(のばら けまり)、佐間犬 弥代(さまいぬ やしろ)は特に凛太郎を可愛がってくれていた。 本当は周りの友達には、血のつながった兄弟として嘘をついていたが、この5人だけには本当のことを話していた。 どうも、血のつながっていない弟として凛太郎を見ることができなかったのと、「捨てられた子」というレッテルを張られる凛太郎を不憫に思ったからだ。時としてそういった人を馬鹿にする人間もこの世にはいるということを幼いながらに感じ取っていた私は、信頼のおける五人だけに真実を伝えていたのだ。 お母さんも、凛太郎のことは本当の息子のように接したし、お父さんも本当の我が子のように叱ったりもした。 お父さんに怒られても平気な顔をしていた凛太郎は、お母さんに怒られるとひどく泣いて、よく私の布団でずっとすすり泣きをしていたのを覚えている。 そのたびにお母さんが申し訳なさそうに私を見て、口で「ごめんね」と言うのだ。私は「お姉ちゃんだから、任せて」そういった気持ちでいつも笑った。 泣き虫の凛太郎は最初のうちは一人でトイレに行けなくて私を起こしてはトイレの前に立たせ、何度も「まだいかないでね」と念を押す。 時折、待っているのが面倒になって一人で帰ろうと歩き出すとそれに気づいた凛太郎が、パンツも履かずにトイレから飛び出てきたときには驚いた。 そんな凛太郎は今では高校生になった。 出会ったときに4歳と言っていたから、私の三つ下だと思っていたが、ただ誕生日が来ていなかっただけで、本当は私の二つ下だった。 私が高校三年生になると、凛太郎も私と同じ高校に入学してきた。 今日はその入学式で、私は三年生代表として挨拶をするためにみんなが座っている場所とは違うところに座って周りを眺めている。 もう少しで新一年生が入場してくる。 練習した合唱曲も完璧だし、もう心配することはない。スピーチだって昨日はあんなに練習したんだ。
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