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そんな凛太郎がだんだん成長していくにつれて男らしさが出てきた。
本人は昔と変わらないと意地を張るが、傍から見た凛太郎はいわゆるイケメンとやらになっていた。
まぁ、私がそれに気が付いたのも、私の友達が凛太郎に惚れた時だったが。
「…では、三年生代表、月島睦美さん、お願いします」
気づけばもう司会は生徒会に代わっていて、私のスピーチの時間がやってきた。
はい、と返事をし一呼吸おいてから立ち上がった。
みんなの視線がまっすぐ私に向かうのが感じられた。もうこの感覚には慣れっこだ。
もともと体が丈夫ではなかった私は運動部に入ることができなかった。その代わりに、私は勉強と生徒会活動に力を入れた。
一年生の時に副会長に立候補し、そのまま二年生になり三年生が生徒会を去ったときは、生徒会長に立候補した。
だから、今は私がこの高校の生徒会会長だ。
登壇した私はまずはぐるりと全体を見回した。
一番前に座っている一年生は私のことをまじまじと見た。
深く礼をして、スゥッと息を吸った。
「新一年生の皆さん、ようこそ光翔高校へ。私は生徒会会長の月島睦美と申します」
マイクを通した声は実際の声と少しずれて周りに伝わるから初めての時は喋り続けるのが難しかったが、今ではもうお手の物。私は何となく凛太郎のクラスを眺めながらスピーチを続けた。
ふと、何気なく凛太郎を見ると、目を伏せて斜め下を向いている凛太郎が目に入った。背筋は相変わらず伸びているが、目は私と合わない。他の生徒とは合う目が凛太郎とは合わなくて少し寂しい気もした。
ずっと凛太郎を見つめていたせいか、隣の男の子が凛太郎を小突くと、凛太郎は恐る恐る目をあげ、私と目が合うと恥ずかしそうにまた目をそらした。
その仕草がなんだか可愛らしくて、私は心の中で微笑みながらスッと他の方へ目をやった。
「…以上で私の話は終わります。これからの学校生活頑張ってください」
締めの言葉を告げ、深く礼をし、拍手が鳴り響く中私は自分の席に戻っていった。安堵のため息は自然と漏れ、そのあとの始業式はあっという間に終わってしまった。
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