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「なぁ、生徒会長、なんだっけ、むつみ先輩?あの人絶対凛太郎のこと見てたよな」
教室に帰るなり、同じクラスの千賀 南海(ちが みなみ)がそういって俺の肩を叩いた。
「気のせいじゃない」
「またまたぁ。お前も意識してたくせに。生徒会長、結構可愛かったし」
「別に」
俺は面倒といった様子で肩の手を払い、席に着いた。
千賀は、入試の時に席が隣だったやつで、消しゴムを一時間のうちに4回は落としていたやつだったから記憶にあったやつなのだが、合格発表の時に話しかけられて以来、俺は千賀と友達のような関係になっている。
もちろん、生徒会長である睦美という先輩が俺の姉だということは知らない。
「でもさー、あれだよな。可愛い子多いな」
千賀は声を潜めるようにニシシと笑い、クラスを見渡したが俺は首を傾げた。
「なんだよー、好みの子いないの?」
「うーん、今のところはね」
そうかぁ、と残念そうにため息をついた千賀は先生が来たと同時に自分の席について、またあとでな、と目を細めた。
朝起きてから緊張して、母さんと父さんが目立つ服を着ていくと言うから緊張して、睦美が頑張ってというから緊張して、入場の時は睦美が一番に見えて緊張して、スピーチの時に俺をガン見する睦美に緊張し、一瞬たりとも休める暇がなかった俺は、やっと大きなため息をつくことができた。
「ん?どうした月島。自己紹介に何か不満でもあるのか?」
「あっ、いいえ!!何でもないです!!」
先生の自己紹介の途中にため息をついてしまっていた俺は慌てて訂正をしたが、クラスのみんなの目はすでに俺に集まった。
…あぁ、やってしまった。
クスクスと笑われた俺は恥ずかしくなって口元を手で隠しながら頬杖をついた。
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