出会い

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「おはよ、暦。希子ちゃんから私に用があるって聞いたんだけど」 「あぁ。これを渡してくれって頼まれてさ」 暦はポケットから何やら手紙を取り出し、私に突き出した。 「なにこれ。私宛?」 「当たり前だろ」 コツンと私の頭の上にこぶしを置き、私が開ける手紙を覗き込んだ。 「あ、これラブレターじゃね」 暦がそういった途端、周りの人が私に群がってきた。 「嘘ーー!!誰から?!」 「えぇぇ!!てか、今月二枚目じゃねっ?!」 「いやでもまだ読んでないからわからないし…。それにこれは一人で読むものだと今気が付いたから家で読むね!!はい、みんな解散ー!!」 私がそういってみんなを引きはがそうとした瞬間、ヒョイっと手紙を誰かに取られてしまった。驚いて手が伸びてきた方向を見ると、そこにいたのはまたまた幼馴染の佐間犬弥代だった。 「もーらい!!」 「ちょ、ちょっと弥代!!!」 弥代はニシシと笑うと手紙を持った手を上にあげた。 「あっ!!卑怯だぞ!!私の手が届かないじゃないか!!」 私は弥代をバシバシ叩きながら手紙に手を伸ばす。 「ほらほら、チビは黙ってなさいって」 そういった弥代は私を腕の中にすっぽりと収めた。 「うぎゃーー!!やめろ!!」 ジタバタともがく姿は虚しく、片手で後ろから抱きしめられている形になってしまった私を見たみんなは「また、いつも通りだな」とほのぼのした目で見つめている。 「え、何ちょっとみんな助けてよ。」 「えーーっと何々…?放課後に、第二体育館前にきてください。だって。」 みんなに聞こえる声で読み上げられた私宛の手紙は弥代が片手で綺麗に畳んで私のポケットに突っ込んだ。 「ちょっと弥代、それセクハラにあたるから。あとそろそろ離してよ。くっつきすぎ」 「何言ってんだよ今更」 弥代は何食わぬ顔で私をさらにぎゅっと抱きしめた。 こんな光景はいつものことだからみんな何も言わないけれど、初めての人が見たらベタベタくっついているカップルに見えてしまう。
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