4人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕、本当にあの子たちの親になりたかったんだよ、親族相手に戦ってもいいと思ったんだ」
「うん」
「皆に言われた、妙な同情を抱くのは勝手だけど、早く自分達の子供を作れ、子供がいないからあの子たちに肩入れするんだと」
「言いたいこと、わかってる」
「僕は……」
「時期が来たら、許されたら、授けられるのが子宝でしょ。まだ私たちにはその時が来てないだけ。でも、あの子たちは違うのよね」
「さっちゃん」
「ね、あなた」
「……うん」
「お義父様から、医者には向かないって言われたそうだけど。私はね、ちょっと違うと思うの。本当はね、適性があるの、でもね、あなたは人に肩入れするのが好きなのよね。接した人全てに同じように力を尽くしてすり切れる。人が好きすぎて巻き込まれすぎてしまうんだわ。あなたが潰れてしまわないように……止めろとおっしゃったのね」
そんなこと、と言って。幸宏は足元の小石を蹴った。
子犬は下げていた頭を上げ、鼻をうごめかす。
「あなた、これから仕事が待ってるんでしょ。出なくていいの?」
「うん、あるにはあるんだけど……いいや、今日はサボタージュで」
幸宏はうんと背伸びした。
「もう、だめよ、お仕事、行ってらっしゃい」
「やだよ」ぷいっと顔を背け、口元をぷうと膨らませる。
「ほら、こいつも休め、って言ってるし。散歩に行きたいんだよ、な?」
犬の頭を撫でながら、彼は呼んだ。
「コロ」と。
最初のコメントを投稿しよう!