幸くの悲恋

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幸くの悲恋「無色」 あの夏…あなたは死んだ。 私を残して…。 窓から空を見上げれば満開の星空。 この星空がこんなに輝くのは このどれかに貴方が居るからなのでしょう? 貴方は私に後を追うことさえ許してくれなかったね。 貴方がいない私なんて只の抜け殻なのよ。貴方なしでは生きられないのよ。 なのに貴方は居なくなった ねぇ独りにしないで 目に写るものが全て歪み始めてた。 泣いても泣いても涙は枯れないものなのね? 貴方が居なくなってから初めて知ったわ。 逢いたいと泣き続けた夜に限って貴方は私の夢に出てくるのね。 夢から醒めては消える貴方の笑顔も愛しすぎるその声も。 すべては夢でしか無いのに…。 もう一度逢えるなら夢の中でも良いと何回望んだでしょう。 夢の中でしか逢えないなら夢の中のままで良いの。 自分で死ぬことが許されないなら誰か永遠の眠りにつかせてと神にさえ祈ったわ。 それが届いたのか… 「カハッ…ゴホッゴホッ…」 私の口から滴る赤い液体。 気付いたときにはもう手遅れだった。 でも、私はこんなにも安らかよ? 貴方に出会わなければ良かったと後悔する日も有ったけど いまはそうも思わないわ だって…やっと貴方に逢えるんだもの。そろそろ日が昇る 人も街も騒めきだす そして私は… この汚い世の中から 星空に向かって飛び立つの もしそっちで逢えたなら 壊れるほど強く抱き締めてね? 「ゆき…むらさま…」 やっと逢える。 もう、二度と離れないから。 「だいすき…」 少女の魂は今、 零れた流れ星と共に 愛する者の待つ空へと 高く、高く飛び立つ… end
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