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ジャック・カーターは水道につないだホースで庭の花々に水をやった。
そのついでに、庭に面した道路の埃が舞わないように水を撒くことなど、造作もないことだ。
あくまで物のついで。
善意のつもりはない。
けれど、
「ご精が出ますわね、カーターさん」
向かいに住むパーキンソン夫人がわざわざ出てきて、カーターをねぎらってくれる。
「いやいや、ただの手慰みですよ。なにせ時間だけはたっぷりある」
自嘲するように笑って首をすくめてみせるカーターに、
「それでも思いついて実行できることがすばらしいのですよ。これまでも十分に世の中のために働いてきたのですもの。すべての時間を自分のために使っても罰があたることはありませんわ」
パーキンソン夫人は穏やかに微笑んだ。
「そうそう、このあとチェリーパイを焼きますの。よろしければお持ちしますわ」
「なるほど。やはり奉仕活動には神のお恵みが降るらしい。喜んでいただきますよパーキンソン夫人」
「レベッカ」
「はい?」
「レベッカと呼んでくださって結構よ。これから良き隣人となるのですもの。夫のアレクも後ほど一緒に伺います」
「それは嬉しい。では私のことはジャックと」
そしてジャック・カーターとレベッカは握手をして、訪問の約束をする。
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