第1章

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1時を過ぎた頃、レイフは寝室にいた。 車の音が家の前で停まった。 マックスの声が聞こえてきた。 レイフは窓のカーテンの隙間から下を覗いた。 車から出てきたマックスはフラフラでかなり酔っているようだった。運転席から出て来た男が、車に寄りかかって立つマックスの前に回り込んだ。 マックスは車に背中をつけて、男の背中に隠されるように抱きしめられていた。 レイフは見ているのが辛い気分になって、カーテンを閉めようとした。が、男が顔を背けたマックスに、無理にキスをしたのが見えた。マックスがフラつきながらも男を引き離そうとすると、男は更にマックスを抱きしめて強引にキスをした。 レイフは、思わず下にかけ降りた。 そして玄関の扉を開けた。 男は気づかずに、玄関に背中を向けてマックスに夢中でキスをしていた。 マックスはフラフラしながら 「ダメだっ…て…」 と、小さく呟いていた。 「愛してるんだ」 レイフが近づくと、男は足音に気づいて振り返った。 レイフはとりあえず、黙って男をマックスから引き離すと一発殴った。 男は車に体を強打した。 マックスは勢いで、地面に倒れ込んだ。 「レイフ…」 レイフは 「帰れ」 と、男に言った。 「レイフ何も殴らなく、ても…」 マックスのろれつは全くまわっていない。が、レイフに抗議していることだけはわかった。 「俺はマックスを愛してる」 男はそう言いながら体勢を立て直すと、レイフに向き合った。 「だから…俺は…結婚してるやつは…無理だって…」 マックスがフラフラしながら立ち上がろうとするのを、レイフが支えた。 男は悲しげにマックスをしばらく見つめていたが、やがて何も言わずに車に乗り込んだ。 そして諦めたように車は発進した。 マックスの恋人は、話によるといつも年配の男だったようだ。その男も40は過ぎていた。 マックスはレイフに抱きついた。 酔っているのだ。 「レイフ、ごめ、ん、」 レイフは、来る、と、思った。 急いでマックスを抱き上げると、家に飛び込み、バスルームに走って直行した。 トイレで下ろすと、ほぼ強引にマックスの顔を便器に押し付けた。 マックスは間一髪、そこに嘔吐した。 「勘弁してくれ」 レイフはマックスの背中をさすりながら、ため息をついてトイレの床に座り込んだ。 「飲み…過ぎ…た…よ…」 「ああ、そうだな…見ればわかる」
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