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いよいよ本降りになった頃、レイフは車を走らせていた。
早く帰らないと、ムーニーがうちに来ることになっていた。ピンカートン私立探偵事務所の事務員だ。
ピンカートンは、違法捜査や危険人物の暗殺を国から、いや、大統領から黙認されていた。レイフはピンカートンの末端の道具に過ぎない自覚を持っていた。
レイフは殺し屋だ。
大概は、長期の捜査が終わった後に、レイフの元に依頼が来る。
急いでレイフが家に帰ると、リビングに見知らぬ派手な男がだらしなく座っていた。
音楽関係の人間だとでも言うような風貌だ。髪は紫とブロンドのミックスで、背中まで真っ直ぐ綺麗に伸びていた。唇は赤く、アイラインを綺麗にひいていた。ヒョロヒョロで背は高く、手足は長い。ヨレヨレのピンクのジャージを上下で着ていた。しかも袖もズボン丈も寸足らずだ。
「よぉ」
男は立ち上がって満面の笑みでレイフに近づいた。
レイフは手に持っていたトイレットペーパーを床に置くと、反射的に胸ポケットの拳銃に触れて言った。
「誰だ」
「レイフ帰ったのか?」
キッチンの方からマックスの声がして、杖をつく音が聞こえてきた。マックスは足首を骨折している。
そして勢いよくリビングに入ってくるとレイフの前に立った。
「おかえり、レイフ」
マックスは天使のような清らかな笑みでレイフを見た。
マックスは殺し屋の組織のボス、ウォーレン・ビディの養子だった。レイフはウォーレンを始末する為にビディに近づいたのだが、結局ビディの抗争に巻き込まれ、マックスを助けてしまった。ビディの屋敷は爆破され、新しい拠点はお化け屋敷のようだ。マックスはそこに住むことを嫌がった。そしてここに住みついてしまったのだ。
「キースだ。話したろ?大学時代の友達」
マックスは笑顔だ。
キースも
「初めまして」
と、にこやかに言った。
「ああ」
レイフはその一言を発すると、黙って階段を上がった。
そして、マックスを呼んだ。
「マックス、ちょっと来い」
マックスは階段をゆっくり上がって、レイフの後ろをついて寝室に入って行った。
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