第1章

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 いよいよ本降りになった頃、レイフは車を走らせていた。 早く帰らないと、ムーニーがうちに来ることになっていた。ピンカートン私立探偵事務所の事務員だ。 ピンカートンは、違法捜査や危険人物の暗殺を国から、いや、大統領から黙認されていた。レイフはピンカートンの末端の道具に過ぎない自覚を持っていた。 レイフは殺し屋だ。 大概は、長期の捜査が終わった後に、レイフの元に依頼が来る。 急いでレイフが家に帰ると、リビングに見知らぬ派手な男がだらしなく座っていた。 音楽関係の人間だとでも言うような風貌だ。髪は紫とブロンドのミックスで、背中まで真っ直ぐ綺麗に伸びていた。唇は赤く、アイラインを綺麗にひいていた。ヒョロヒョロで背は高く、手足は長い。ヨレヨレのピンクのジャージを上下で着ていた。しかも袖もズボン丈も寸足らずだ。 「よぉ」 男は立ち上がって満面の笑みでレイフに近づいた。 レイフは手に持っていたトイレットペーパーを床に置くと、反射的に胸ポケットの拳銃に触れて言った。 「誰だ」 「レイフ帰ったのか?」 キッチンの方からマックスの声がして、杖をつく音が聞こえてきた。マックスは足首を骨折している。 そして勢いよくリビングに入ってくるとレイフの前に立った。 「おかえり、レイフ」 マックスは天使のような清らかな笑みでレイフを見た。 マックスは殺し屋の組織のボス、ウォーレン・ビディの養子だった。レイフはウォーレンを始末する為にビディに近づいたのだが、結局ビディの抗争に巻き込まれ、マックスを助けてしまった。ビディの屋敷は爆破され、新しい拠点はお化け屋敷のようだ。マックスはそこに住むことを嫌がった。そしてここに住みついてしまったのだ。 「キースだ。話したろ?大学時代の友達」 マックスは笑顔だ。 キースも 「初めまして」 と、にこやかに言った。 「ああ」 レイフはその一言を発すると、黙って階段を上がった。 そして、マックスを呼んだ。 「マックス、ちょっと来い」 マックスは階段をゆっくり上がって、レイフの後ろをついて寝室に入って行った。
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