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「座れ」
レイフはマックスをテーブルにつかせた。
「誰が知らない人間を上げていいって言った」
「心配して来てくれたんだ。帰れなんて言えない」
「何で住所を知ってる」
「聞かれたから教えた」
レイフはマックスを睨みつけた。…つもりだったが、マックスには通用しなかった。
「いいだろ、友達なんだ」
「お前、俺の職業は分かってるな」
「殺し…ゃ」
マックスは吐息にも似た声で小さく言った。
「俺に無断で誰かに住所を教えるな。お前、俺をはめる気か?」
「キースだからいいだろ」
「俺はキースを知らない」
「紹介するよ。雑誌社に勤めてる」
レイフは、あのいでたちで雑誌社に勤めているというのも、にわかには信じられないと思った。
「…そんな問題じゃない」
「じゃあ、どんな問題なんだ!」
レイフは、マックスが知り合ったばかりのレイフを当時住んでいた家に呼んだことを思い出した。
マックスに近づくのは簡単だった。マックスは警戒するという概念が無いのだ。多分養父のウォーレンも、マックスのこの行動には手を焼いていたのだろう。
「分かった、今度俺が知らない奴にこの家を教えたら出て行ってもらうからな」
「そんな…ひどいよ。今追い出されたら住む場所が無い」
「忘れたのか?俺はウォーレンを…」
そこまで言ってレイフは言葉を飲んだ。
ウォーレンを殺そうとしていた、と言いそうになって口をつぐんだ。
マックスは泣き顔になった。マックスは殺されたウォーレンにずっと片思いをしているのだ。
「マックス…ごめん、悪かった、言い過ぎた。ごめん…」
「ウォーレンもおんなじこと言って怒ってた…」
「分かった、マックス、キースはいい。キースには来て貰っても全然構わない。今度からは、俺に先に言ってくれ。どこで知り合った誰に住所を教えるのか、な?」
「急に来ることになったらどうするんだ?」
「急に来ることに、ならないようにしてくれ」
レイフは怒りたいのを我慢した。
「分かったよ」
マックスはそう言うと、寝室を出て行こうとした。
「マックス」
マックスが振り返った。
レイフは、そのマックスの表情から目が離せない気分になった。潤んだ瞳がとても綺麗だ。
「あの、今から人が来る…出て行って貰ってくれ」
「分かった」
マックスは部屋を出て行った。
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