第1章

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部屋に入ると、ムーニーが 「あれ、マックス・ビディよね?」 と、言った。 「ああ」 レイフはテーブルについた。 ムーニーは持参した紙コップのコーヒーをテーブルに置くと、レイフの前に座った。 「…何でここにいるの?」 「住む場所が無いらしい」 「住む場所が無くても、もうちょっとマシな相手選ぶでしょ?あなた、マックスも殺すかもしれなかったのよ」 レイフは頷いた。 「ニールからも預かってくれって言われた」 ムーニーは驚いた表情でレイフを見つめた。 「ビディからそこまで信用された?」 「…助けたからな」 ムーニーはレイフをジッと見つめた。 レイフは、緊迫した。ターゲットだった男の息子だ。考えようによればヤバい。 「あの状況で、ビディから信用を勝ち取るなんて、ちょっと無いよね、」 「そうだな」 「ピンカートンのことは気付かれて無いわよね」 「当たり前だ」 ニールも、マックスも、レイフはどこかのファミリーの一員だと思っている。 ムーニーは考え込んだ。 レイフは、ただムーニーを見つめた。ムーニーが何を言い出すか分からない。 「あの状況で、ビディから信用を勝ち取るなんて、ちょっと無いよね、すごいね、あなた」 レイフは、時々ムーニーの適当 さに苛立つが、時々は救われた。今はその間くらいだ。 「で、今日の仕事は?うまく行った?」 「完了した」 「そう、お疲れのところ、早速で悪いんだけど…次はね…」 「前も言ったが、立て続けに仕事を持って来ないでくれ」 「ごめんごめん、今回だけ、ね?」 ムーニーはコーヒーを一口飲んで、ポケットからクッキーの袋を出した。 「食べる?」 「いや、いい」 レイフは首を横に振った。
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