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ムーニーはメモと写真を入れた封筒をレイフに渡した。中の紙切れには住所が手書きで書いてあった。
「今回の仕事はね、コナー・ヨーク」
そう言ってムーニーはレイフの顔を見つめた。
「コナー?」
「そう」
「コナー・ヨーク?」
「そうよ」
レイフはコナーを知っていた。何度か危ない仕事を一緒にしたことがある。レイフと同じく、ピンカートンの殺しのエージェントだったはずだ。
レイフはただ驚いた。
「生かしておけない事態になったの」
「何でだ」
「コナーは…無政府主義者の団体が暮らす島に派遣されたの。大統領暗殺計画があると聞いて、首謀者を始末しに行ったのよ。団体名は、パクスリジョニス…平和の国って意味らしいわよ」
レイフは紙切れに挟まっていた写真を見た。コナーの写真と、とても綺麗な女の写真だ。
「コナーは、そこで彼らに感化されて、ピンカートンを裏切ったのよ」
「この女は?」
「彼女はゾーイ・ヌット。彼女の兄のクリント・ヌットが代表なの。コナーは彼女を…多分愛してしまったんでしょうね。今二人は秘密裏に、名前を変えてブロンクスに住んでる」
「兄は?」
「兄は、ピンピンしてるわ。…コナーからピンカートンの情報がパクスリジョニスに行っているとすれば、マズいでしょ?」
「マズいな…」
「島には、他のエージェントをやったの。ピンカートンの存在が漏れた可能性があるなら、島ごと全員沈没してもらうわ。あなたは、コナーとゾーイをお願い」
ムーニーは可愛らしく笑った。
「コナーは…俺をよく知ってる。俺が現れたら消しにきたって嫌でも分かる。顔が知れてない奴の方がいいんじゃないか?」
「もう、配役は決まったから、お願い」
レイフはムーニーの無邪気な笑みを見ながら、まだ信じられない思いだった。
「ね、ところでさ、」
ムーニーはコーヒーを飲みながらレイフを見つめた。
「何か、いつもと雰囲気変わったわね」
「そうか?」
「ほら、そういうとこ」
レイフはムーニーが何を言いたいのかと思った。
「いつものあなたなら、雰囲気変わったって言われても、絶対聞き流してた。…明るくなったって言うか…何かいいことあったの?」
「いや、別に」
「恋でもしたのかしら」
ムーニーは、真剣だった。
「いや…」
そう言いながら、レイフはマックスの笑顔を思い出していた。
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