第1章

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ムーニーはメモと写真を入れた封筒をレイフに渡した。中の紙切れには住所が手書きで書いてあった。 「今回の仕事はね、コナー・ヨーク」 そう言ってムーニーはレイフの顔を見つめた。 「コナー?」 「そう」 「コナー・ヨーク?」 「そうよ」 レイフはコナーを知っていた。何度か危ない仕事を一緒にしたことがある。レイフと同じく、ピンカートンの殺しのエージェントだったはずだ。 レイフはただ驚いた。 「生かしておけない事態になったの」 「何でだ」 「コナーは…無政府主義者の団体が暮らす島に派遣されたの。大統領暗殺計画があると聞いて、首謀者を始末しに行ったのよ。団体名は、パクスリジョニス…平和の国って意味らしいわよ」 レイフは紙切れに挟まっていた写真を見た。コナーの写真と、とても綺麗な女の写真だ。 「コナーは、そこで彼らに感化されて、ピンカートンを裏切ったのよ」 「この女は?」 「彼女はゾーイ・ヌット。彼女の兄のクリント・ヌットが代表なの。コナーは彼女を…多分愛してしまったんでしょうね。今二人は秘密裏に、名前を変えてブロンクスに住んでる」 「兄は?」 「兄は、ピンピンしてるわ。…コナーからピンカートンの情報がパクスリジョニスに行っているとすれば、マズいでしょ?」 「マズいな…」 「島には、他のエージェントをやったの。ピンカートンの存在が漏れた可能性があるなら、島ごと全員沈没してもらうわ。あなたは、コナーとゾーイをお願い」 ムーニーは可愛らしく笑った。 「コナーは…俺をよく知ってる。俺が現れたら消しにきたって嫌でも分かる。顔が知れてない奴の方がいいんじゃないか?」 「もう、配役は決まったから、お願い」 レイフはムーニーの無邪気な笑みを見ながら、まだ信じられない思いだった。 「ね、ところでさ、」 ムーニーはコーヒーを飲みながらレイフを見つめた。 「何か、いつもと雰囲気変わったわね」 「そうか?」 「ほら、そういうとこ」 レイフはムーニーが何を言いたいのかと思った。 「いつものあなたなら、雰囲気変わったって言われても、絶対聞き流してた。…明るくなったって言うか…何かいいことあったの?」 「いや、別に」 「恋でもしたのかしら」 ムーニーは、真剣だった。 「いや…」 そう言いながら、レイフはマックスの笑顔を思い出していた。
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