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翌日、レイフは消音器付の小型銃を持って、バスでブロンクスの貧民街に足を運んだ。
レイフは昔この近くに住んでいた。どんなにタチの悪い連中が住みついているのかよく知っている。
ダボダボの黒いジャージの上下にニット帽を深く被り、その上にフードを被った。グレーがかった眼鏡をかけ、浅黒い肌に見えるようにファンデーションを塗った。
そしてムーニーから聞いたアパートを訪ねた。
アパートの前には数人の若者が、昼間から薬でやられていた。階段の踊場にはホームレスの男が毛布にくるまって眠っていた。何のものだか分からない異臭が漂っている。
レイフは、静かに3階まで上がると部屋の前に立った。今いるのなら、さっさと片付けてしまおうと思った。このあたりでは、殺人事件が起きるのは日常茶飯事だ。
ノックをした。
反応が無かった。もう一度ノックをした。
ノブに手をかけると、扉が開いた。
レイフは銃を手に取ると、壁の影に隠れてゆっくりと扉を開けた。まだ反応が無い。
思い切って、扉を勢いよく全開にした。
静かだ。
外から子供の泣き声だけが聞こえてきた。
レイフはゆっくりと部屋の中を覗いた。誰もいないように思えた。
銃を構えて、中に踏み入れた。
ベッドが一つと、小さなキッチン、奥にシャワー室があるだけの小さな部屋だった。
シャワー室の扉が半開きになっていた。レイフは目を疑った。
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