第1章

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その半開きの扉から、人間の腕だけが出ているのを見た。腕は血まみれで、床には血痕が落ちていた。 レイフは部屋の扉を閉めると、シャワー室に近づいて、そして中を見た。 女が全裸で倒れていた。刺し傷が数カ所、そして心臓をナイフで突き刺され、死んでいた。 写真で見た、ゾーイ・ヌットだ。 血の変色から見て、今日の傷では無い。少なくとも1日は経っていた。 レイフは、コナーの足取りが何かつかめないかと思い、部屋を物色し始めた。 食器棚には皿とマグカップだけで、ほとんど何も入っていない。ゴミ箱には、掃除の時に使ったのだろう汚れてボロボロの布切れと、食事の時に出た包みやトレー、スーパーのレシートしか入っていなかった。レシートの日付は2日前と3日前、4日前だ。 クローゼットには下着類と、テーブルには数日分の新聞があった。新聞の日付を見た。二日前までだ。 手がかりになるものを探しながら、殺し屋であるコナーが家の中に証拠になるようなものを置いておくわけが無いと思った。 マックスはリビングでテレビを観ていた。 玄関のベルが鳴った。 「はい」 インターホンに出た。画面に映った男は、ガタイのいい青年だったが、どことなくやつれた感じがした。 「レイフ・シュレンジャー?」 「今レイフは留守なんだ」 「そうか…あの、いつ帰る?」 「わかんない」 「…中で待たせてもらえないか?」 「友達?」 「あ、ああ…」 「いいよ」 マックスは扉を開けた。
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