第1章

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7月7日。 本日のお題 ・頭痛 ・女 ・リスク タイトル[栽培男]  目が覚めると、今日は知らない女が隣で寝息をたてていた。しっとりと汗を吸った髪の毛が頬に張り付き、息苦しそうに寝返りをうつ。顔は幼く、どう見ても中学生。よくて幼顔の高校生というところだ。  男は、ズキンと痛む頭を抱えて、上半身を起こした。共にめくれた布団に、あらわになった少女の背中に動悸が激しくなる。慌ててベッドから抜け出して、さらに自分が一糸まとわぬ姿でいることに気付き、とりあえずは床に転がっていたズボンに足を通した。  どれだけ記憶を辿っても少女は彼の中に現れない。男はコップいっぱいの水を一気に飲み干し、深い溜息をついた。  しかし、男に心当たりが全くないというわけではない。思えば、あの時から……といったものはあるのだ。  彼はそれなりに真面目な社会人であった。それなりには真面目に働いたし、上司に目をつけられない程度には功績をあげていて、後輩から嫌われない程度には面倒見もよかった。  しかし、彼が働いていた会社はそれなりに業績が良かったわけではなかったらしく、勤続12年目のある日、とうとう倒産し、彼は職を失った。  それからは日雇い労働などで生計をたてていたのだが、そのひとつに「植物の栽培」があった。  なんでも、ある植物の種を収穫するのが主な仕事内容らしい。内容とかけ離れた報酬金に、最初は怪しいと思っていた彼だったが、どうやら法に触れるものを栽培させられるわけではないと知り、飛び込むように仕事を受けた。  部屋に運び込まれた植物に、1日1度、水を与えるだけの楽な仕事。週に1度、どれほど育ったのか監査員が見に来るだけなのだが、思えばこのバイトを請け負ってからだ。身の回りで頭を抱えるようなことが頻発し始めたのは。  男は、ジョウロに水道水を入れ、例の植物に水を与えてやる。  やはりこの仕事には裏があるのだと思う。なんのリスクもないのに、植物に水をやるだけのバイトに万単位の報酬がある方がおかしいのだ。  あぁ、いったいおれはなにを育てているんだろうか。  目の奥を抉るような頭痛に思わず顔を覆う。振り返れば、見知らぬ女が目を開けてこちらを見つめていた。  視線が合い、彼女がいやらしく笑う。  いったいあの女は誰なんだ……頭痛の種は、増えていくばかりである。
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