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館内放送の中、岡崎さんを見ると彼は帰る支度中。
私も慌てて荷物をまとめると、勇気を出してその背に近づいた。
「…お疲れ様です。岡崎さん」
ぽんっと、
軽くその背に触れて声をかけた。
「え…美樹…!?」
岡崎さんが振り向く。
急に声をかけられて、驚きの顔で私を見下ろした。
私はにこりと笑って岡崎さんを見上げた。
「びっ…くりした…
何でここに美樹が居るの?」
「…これ、勉強中です!」
私は簿記二級問題集と書いてある表紙をよく見えるように、顔のところまで持ち上げる。
教え子が先生に褒めてと得意げにするような気持ちだった。
「あ…受けるの? 試験」
「はい。
まだ勉強始めたばかりですけどね」
言ってから問題集を鞄にしまおうとした。すると、
「わっ! え?」
私の手から岡崎さんが問題集を抜き取って、ぺらぺらとページを捲る。
「…全然、新品。
書き込んだあとが無いんだけど?」
少し呆れ顔で岡崎さんは私を見た。
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