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私は目と口を大きく開いて岡崎さんを見た。 「美樹に簿記を教えていると、目指すと決めた最初の頃の気持ちを思い出して…俺も頑張ろうって思える」 「…最初の頃の…気持ち…?」 「…かわいい後輩に触発されてやる気出してるようじゃ、俺もまだまだだな…」 岡崎さんは、ははっと笑った。 『かわいい後輩』 ほんの少し前までは、そんなこと言われただけでも嬉しくて心は弾んだ。 でも、今は、 『かわいい』と言う言葉に浮かれるより、『後輩』に心を痛める。 岡崎さんに言われると…隔たりを感じる。 いつの間にか私は、後輩と呼ばれることに… 不満を感じるようになっていた。 ああ…。私、 どんどん我儘になっていっている。 先輩と後輩の関係じゃ、もう… 物足りない。 「 わっ!」 黙って一人考え込んでいると、岡崎さんが急に私の頭を強く撫でた。
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