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整然と植えられた青々とした街路樹がすごい勢いで後ろへと流れていく。 ホワイト系のボンネットに夏の日差しが反射して、フロントガラスの向こう、景色は眩しく光る。 「…大丈夫です。 今日は私も真面目に勉強します。 邪魔しないので、 集中して頑張って下さいね」 エールを込めて微笑み、運転をしている岡崎さんの横顔を見つめて言った。 信号が赤で車が停まる。 目の前の横断歩道をカップルや親子連れが楽しそうに過ぎていく。 「…丁度一人で飽きてたところ。 一緒に勉強する人がいれば励みになるよ。 邪魔じゃないよ」 岡崎さんは少しだけ顔を私の方に向けて、優しく微笑んだ。 「……え?」 こっちから押しかけての勉強。 …迷惑だろうなと思っていた。 「私、邪魔じゃない…?」 信号がすぐに青になる。 岡崎さんは前を向き、アクセルペダルに足をかける。車が静かに走り出した。
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