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「…っ信じられないっ…!」
岡崎さんは無言で椅子の背にもたれ掛かり、私を見上げ見つめる。
「…もう…帰ってください!」
「…言われなくても。
用事済んだから帰るよ。スイカ、ご馳走」
椅子から立ち上がり、岡崎さんは玄関へと向かう。
その背を見つめながら、私の元へ帰ってきたピアスに触れて確認する。
「…岡崎さん……」
馬鹿な女だなって、自分でも思う。
何をこれ以上期待しているんだって。
始まる前から結果は決まっていたのに。
もう、何も、
どうしようもないのに…。
「…なに? 美樹…」
名前を呼んで引き止めてしまった。
振り向いた岡崎さんと目が合う。
玄関で靴を履いた岡崎さんは、一段高いところにいる私と目線の高さがほぼ一緒。
…さっきも思ったけれど、
事務所の階段で岡崎さんとしたやりとりを私は無意識に思い出してばかり。
「…これで少しは待てる?」
「…え?」
シチュエーションも台詞も少し違うけれど、あの時の感情がまたぶり返してくるのを実感した。
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