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空になったシェリートニックを私はしばらく眺めた。
そして、
視線を目の前にいる岡崎さんに移す。
「…佐伯さんのことは
気になります。だけど…
…私がしたいお話は別です」
岡崎さんは少し目を見開き、驚いて私を見た。
「…美樹のしたい話は若菜じゃないの?」
胸がばくばくだった。
傷つくのは怖いし嫌。
だけどもう…
逃げない。
勇気を出して私は幸せを…
掴みに行く。…自らの手で。
「違います。私がしたいお話は…」
それだけを言って私はまだ残っている方のシェリートニックのグラスをゆっくり持ち上げた。
そしてそのまま一口、
シェリートニックを飲んだ。
「…え。美樹…?」
「…やっぱり美味しいですね。
お話の前に飲んじゃいました」
まだ驚いている岡崎さんに向かって私は、にこっと笑いかけた。
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