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「……殴るふりなんていちいちしなくていいから、
もっと可愛く抱きついて欲しいんだけど?」
抱きしめたまま優しく髪を撫で、俺は美樹に囁く。
「…ふりじゃなくて殴りに行っているんだけど?」
俺の手によって顔を胸に押し付けられ、篭った声で美樹は言った。
「…抱きついたんじゃないもん」
「…あっそ。分かった。
じゃあやり直し」
「え?!」
抱きしめるのを止め、美樹をソファーの端まで押し戻す。
自分でもガキ臭いって自覚はある。
だが、美樹をからかい、いじめずにはいられない。
「…美樹の方から甘えに来て」
手を離すと俺は、美樹を試すような目で見た。
「え…私から…?!」
目を見開き、驚きの表情を浮かべる美樹はそのまま暫くフリーズ。
…美樹は、数分経っても甘えて来なかった。
あー…、きつい。
禁煙している気分。
自分で俺からは触れないって決めたのに、
目の前にしておわずけ食らってる気分。
もしかして…
犬なのは俺の方?
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