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仕掛けずに甘えられたら嬉しい。
そう思って言ったんだが…
美樹にとって俺は、
甘えるほどでもない存在ってことか?
情けな…。
俺ばっかりがっつりているみたいで面白くない。
返事は無いしいたたまれなくなって、今日は撤収しようと俺は無言で立ち上がった。
「…ま、待って祐哉くん…」
やっとで美樹は立ち去ろうとする俺の腕に触れ、制止した。
「…遅い。今日はもう帰…」
「やだ。帰らないで。…もう少しいて」
「……」
想定外の破壊力だった。
愛しさが込み上げてくる。
と、同時に、からかって試したことに対する罪悪感が沸き起こる。
……まるで…そう、あれだ。
「捨て犬を拾わず置き去りにする気分だ」
「……捨て犬?」
うるっとした目で美樹は俺を見上げる。
「…いい加減、犬扱い止めてよ」
「…もっと甘えてくれたら考える」
縋り付くような美樹の目がたまらない。
もっと欲しい。もっと…愛でていたかった。
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