*番外編*

19/38
前へ
/38ページ
次へ
仕掛けずに甘えられたら嬉しい。 そう思って言ったんだが… 美樹にとって俺は、 甘えるほどでもない存在ってことか? 情けな…。 俺ばっかりがっつりているみたいで面白くない。 返事は無いしいたたまれなくなって、今日は撤収しようと俺は無言で立ち上がった。 「…ま、待って祐哉くん…」 やっとで美樹は立ち去ろうとする俺の腕に触れ、制止した。 「…遅い。今日はもう帰…」 「やだ。帰らないで。…もう少しいて」 「……」 想定外の破壊力だった。 愛しさが込み上げてくる。 と、同時に、からかって試したことに対する罪悪感が沸き起こる。 ……まるで…そう、あれだ。 「捨て犬を拾わず置き去りにする気分だ」 「……捨て犬?」 うるっとした目で美樹は俺を見上げる。 「…いい加減、犬扱い止めてよ」 「…もっと甘えてくれたら考える」 縋り付くような美樹の目がたまらない。 もっと欲しい。もっと…愛でていたかった。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

174人が本棚に入れています
本棚に追加