342人が本棚に入れています
本棚に追加
一階から美樹の声がした。
階段の下を覗くと、心配そうな顔で美樹は見上げていた。
「…美樹、上がって来ていいよ」
少し声を張って呼んだ。美樹は頷くと階段を上り、俺のそばへ寄ってきた。
「…茜ちゃん、寮には連絡済みで戻らないみたい。…先にもう寝るって」
「…そう。まじで戻らないつもりか。
あいつ」
茜は結構な意地っ張りだ。
こうと決めたら頑なに自分の意見を通そうとする。
「……本当に今から勉強するの?」
美樹は笑顔を浮かべつつも、機嫌をうかがうような声色で聞いてきた。
「うん。そのつもり。
…取りあえず、美樹も部屋に入る?」
俺はなるべく優しい声で答えると、部屋のドアを開け中に入った。
「…ん。じゃあ少しだけ…」
少し戸惑いつつも、ほっとした顔を美樹はすると続いて部屋に入ってきた。
勉強するためにシステムデスクの前に座る。テキストを取り出しぱらぱらと捲った。
美樹はベッドの手前、座椅子にちょこんと腰掛けると、
「私、すぐに出て行くから。
…今日は茜ちゃんの部屋で寝るね」
破壊的な言葉を放ち、
俺のやる気を一気に削いだ。
最初のコメントを投稿しよう!