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「高井………」
名前を呼ばれてフッと目を開けると、才加が震えた身体を擦り寄せて来た。
具合が悪いのかと焦って抱き寄せれば小さな声でごめんと呟く。………何故謝るんだ。俺はそんなに頼りないのか?
「才加………何故謝る。具合はもういいのか?気付かなくて悪かったな」
今日悠太が居なかったらと思うとぞっとする。俺は才加の体調が悪いことに全く気が付かなかった。
「………違う。高井が家にいる時は本当に元気だった。急に腹が痛くなったんだよ。高井が謝る必要ない」
「………じゃあ、お前が謝る必要もないな?」
「だって………高井にも悠太にも芽衣子さんにも迷惑かけた。俺………面倒臭いだろ?やっぱり嫌になるよな」
小刻みに震え続ける才加の身体をぎゅっと抱き締める。一体こいつは何をそんなに怖がっているんだろう。
「誰も面倒だとは思っていない。みんなお前を心配しているだけだ。お前がいつものお前じゃないと、こっちの調子も狂うだろう?」
ゆっくりと背中をさすり、出来るだけ優しく話しかける。小さく頷く才加を見ながら、自分はこんな人間だったかと可笑しくなった。
「才加………俺の前で無理はしなくていい。ちゃんとそばにいるから、もっと甘えろ」
腕の中で才加が笑う気配がする。
「高井、いい奴だよな。俺さ、高井好きだから迷惑かけたくない」
「迷惑かどうかはお前が決めることじゃない。それに、迷惑にはならないから。心配するな」
才加はクスクスと笑いだし、先程とは違う温かな振動が伝わって来た。
「俺、やっぱ高井好きだなー。リンがさ、高井はお父さんみたいって言ってたの分かるよな」
………お父さんだと。
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