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「…………ところで、黒田先生。いつものご友人が来られていたんですか?」
彼の発した何気ないひと言に、大きく身体が揺れてしまった。
…………何やってるんだ俺。別に大した意味もない、軽い質問じゃないか。
基本的にひとの目を見て話せない俺は、始終俯いてばかりだ。だから、高井さんの何かを含んだような視線にも気付かなかった。
「…………あ。あのアシスタントに来てもらっていたんです。もう、居ませんけど」
嘘は何一つ言っていない。
二度目に目を覚ました時、狭いベッドに居たのは自分だけだった。赤川も我に返って焦ったのかもしれない。
…………後悔、しているんだろうか。酔っ払って男を抱いたんだ。記憶を失くしていない限りは、大きなダメージを受けているに違いない。
「…………黒田先生…?」
ああ、またぼんやりしていたようだ。寝たと言っても、ほんの二、三時間だ。もう少し休まないと、頭が上手く機能していない気がする。
「黒田先生?大丈夫ですか?」
そっと肩に置かれた手に数時間前の赤川がフラッシュバックしてびくっと飛び上がり、あからさまに反応してしまった。高井さんに変に思われたかもしれない。
「…………っ、あ、あの大丈夫………ですから」
「そう、ですか………?本当に?何だか身体が震えていますよ………?」
いつもの爽やかな笑顔を浮かべたまま、ジリジリと距離を詰める高井さんに違和感を感じて首を傾げる。
………何だか、高井さんが怖く感じるんだけど。………変だな。
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