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黒田 麟太郎、二十三歳独身、彼女無し。絶賛売れない漫画家なう。
…………なう、ってなんだ。
「はあ…………やっちゃった……」
目を覚ましたら、隣には逞しい裸体。何度見ても、筋肉がしなやかに付いた細マッチョの裸体。…………羨まし………いやいやいや。
よく考えろ、俺。いくら日に当たらない生活を何年も続けて、色白貧弱な自分の身体を眺めたって、こいつの様にはなれないぞ。
逞しい裸体から視線を上にズラすと、長い睫毛と派手な赤髪。…………昔好きだった漫画の主人公みたいな髪色だ。
逞しい裸体の持ち主は、友人でアシスタントの赤川 楓。…………大事な事だから、二回言おう。こいつは友人で、アシスタントだ。
自分の貧相な身体に巻き付いた長い腕をじっと眺める。そりゃあもう、こんだけ眺めていたら穴も開くだろってくらい、眺めている。
「…………やべぇ、どうしよ………」
いくら考えてみても現実は変わらない。いつも通りのこ汚いワンルーム。シングルベッドの上には、トーンの切れ端やら何やらがくっ付いて、とにかく綺麗とは程遠い。
その狭いシングルベッドに、ぎゅうぎゅうにくっ付いて寝ている俺。相手は………何度見ても、友人でアシスタントの赤川。
大事なことだから、もう一度確認しようか。…………いや、もういいか。現実は変わらないし。
昨日の俺たちは連日の徹夜が祟って、トチ狂っていたとしか思えない。
じゃなきゃ、こんな馬鹿なことになる訳ないだろ。
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